大名倒産

6月30日(金)   雨

 

 8月に「第97回高野山夏季大学」に行きます。今年の講師の一人、浅田次郎さんについて知るため、作品が映画化された「大名倒産」を観てきました。

 恥ずかしながら、あまりこの方の作品を読んだことがなく、「あの山岳小説の方ね。」など新田次郎さんと間違えてました。

 時代小説を多数書いておられますが、とてもポップで読みやすそうです。この「大名倒産」も、父親が息子に「大名倒産」の罪をきせ、切腹か!なんて場面もありましたが、実際は血が流れる場面はなく、残酷というよりは、時代設定こそ江戸時代ですが、現代の話と置き換えて考えられる痛快な話でした。


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 主演は、神木隆之介、その父親役が佐藤浩市、育ての父親が小日向文世などなかなかのキャストで、少々時間設定に無理がある内容だろうと突っ込みたいところもありましたが、映画は楽しいものでした。


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 (内容)

 越後の丹生山藩の鮭売りの息子が、実は大名の跡継ぎだと知らされ、突然大名に。しかし、その藩は、借金25万両、今のお金で100億円。それを知った小四郎が隠居して一狐斎を名乗る父に相談する。そこで授けられた策が「大名倒産」。すなわち藩を倒産させて幕府に借金を肩代わりさせること。でも、それは借金の責任を小四郎に押し付け、小四郎はその責任を取って切腹することに。借金返済の期限は4ヶ月。そこで、幼なじみのさよ、兄の新次郎、喜三郎らと節約プロジェクトを始め、不要なものをどんどん売り、屋敷を手放していく。しかし、幕府に「倒産」を疑われ、借金返済の期日は縮められる。さらに参勤交代の時期とも重なり、更なる借金が増えていく可能性さえ。


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 でも、それを今はやりのキャンプ感覚で、乗りきり、故郷の丹生山藩に戻る。そこで見たものは、主要産業だった鮭漁は廃れ、農地には人影がなくなっていた。やつれた育ての父親に会い、最後の塩鮭をもらった小四郎は、藩の財政に疑いを持ち、幼なじみや若手の侍たちと台帳を確かめていく。そこで分かったことは、台帳の不正記入。江戸に戻り、首を吊り掛けた勘定方から「天元屋」に大金が流れていることをしる。その証拠を突き止め、老中に不正を訴え、倒産と切腹は回避できます。さらに故郷の丹生山藩は、塩鮭を江戸で売り、元の平和が戻っていきました。

 

 

 あり得ない時間設定ながら、身分の高さや能力で人を見ず、人としての心で判断する潔さがこの映画を爽やかなものにしていました。兄、新次郎は鼻を滴し、「うつけもの」と言われ、恋人の父親から結婚を反対されていました。その父親に小四郎は「兄の心の美しさ」を訴えます。この学歴社会、能力至上主義の現代では死語となっている言葉。最近、障がいのある方が主人公の作品も増えてきていますが、世の中が、このようにお互いを考えあえる世界になって欲しいものだと、しみじみと考えさせてくれました。


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